【獣医師監修】猫を守る予防接種~混合ワクチンの種類・選び方・注意点について知ろう~

2023.05.15

  • 混合ワクチン

【獣医師監修】猫を守る予防接種~混合ワクチンの種類・選び方・注意点について知ろう~

混合ワクチンの接種は命を危険に及ぼす恐ろしい感染症から大切な猫ちゃんを守ることができます。

「うちの猫ちゃんは完全室内飼育だからワクチン接種は必要ない!」と思う方もいるかもしれませんが、私たち人間の手や服に付着し気づかないまま持ち帰った病原菌から猫ちゃんが感染してしまう可能性もあります。
混合ワクチンの接種で予防できる感染症と猫ちゃんの「混合ワクチン」について正しく理解し、猫ちゃんの健康を守ってあげましょう。

どうやって選べばいいの?~猫のワクチンの種類と選び方~

1.どうやって選べばいいの?~猫のワクチンの種類と選び方~

猫ちゃんの予防接種である混合ワクチンには、致死率の高い感染症を予防するコアワクチンの「3種混合ワクチン」と、感染リスクが高い猫ちゃんに接種を推奨されているノンコアワクチンがあります。
ノンコアワクチンは「4種混合ワクチン」「5種混合ワクチン」「7種混合ワクチン」など、動物病院によって扱っている種類が異なります。
猫ちゃんの生活環境や体調を考えながら、その子に合った混合ワクチンを獣医師さんと相談し選びましょう。

完全室内飼育の猫ちゃんはコアワクチンである「3種混合ワクチン」を接種すれば、人の手や服に感染源が付着して持ち帰ってしまう恐れのある感染症を予防できます。
外に出たり、別の猫ちゃんと接触がある猫ちゃんは、「5種混合ワクチン」や「7種混合ワクチン」のようなノンコアワクチンの接種も検討しましょう。

混合ワクチンで防げる感染症例

◆3種混合ワクチン:1~3 ◆4種混合ワクチン:1~4 ◆5種・7種混合ワクチン:1~5

コアワクチン(三種混合ワクチン)

  • 1.猫ウイルス性鼻気管炎(FVR)
    猫ヘルペスウイルスにより感染します。子猫が感染しやすく、食欲不振、発熱、くしゃみ、鼻水、目ヤニなど猫風邪と呼ばれる症状がみられます。重症化すると肺炎や失明することも。
  • 2.猫カリシウイルス感染症(FCV)
    鼻気管炎と同じような症状の他に、口内や舌に水疱や潰瘍の症状がみられます。猫ウイルス性鼻気管炎や猫クラミジア感染症と同時に感染することもあります。猫カリシウイルスにはタイプが複数あり、3~5種混合ワクチンの場合1タイプですが7種混合ワクチンの場合カリシウイルスが3タイプに増えます。
  • 3.猫汎白血球感染症(FPLV)
    猫パルボウイルスにより感染します。猫ジステンパーや猫パルボ腸炎とも呼ばれています。感染力が非常に強く、子猫は重症化しやすく命を落とすことも。発熱、食欲不振、激しい嘔吐、下痢などの症状がみられます。

4.猫白血病ウイルス感染症(FeLV)
猫白血病ウイルスを持つ猫との接触や母猫からの母子感染で感染します。室内飼育で他の猫と接触がない場合感染するリスクは低くなります。元気がなくなる、食欲不振、貧血、リンパの腫れなどの症状がみられます。

5.猫クラミジア感染症
結膜炎、鼻水、くしゃみ、咳など猫ウイルス性鼻気管炎や猫カリシウイルス感染症と同様に猫風邪と呼ばれる症状が現れます。子猫の発症が多く、最初は特に結膜炎など眼の症状が現れます。主に感染した猫の目ヤニや鼻水、よだれ、便に触れることで感染しますが、濃厚接触でない場合は感染しにくい感染症です。

2.ワクチン接種は年に1回でいいの?~猫のワクチン接種プログラム~

ワクチン接種プログラムとは、猫ちゃんがワクチンをどの時期に接種するか計画をたてることです。

猫ちゃんの混合ワクチンは1年に1回摂取するイメージを持っている方もいらっしゃるかもしれませんが、初めて混合ワクチンを接種する場合は3~4週間程度の短い期間で追加接種します。
1回のワクチン接種では十分な量の抗体が作られない可能性があるため、追加で接種することで確実に抗体を作り、感染症に備えます。

子猫の場合、母猫の初乳(子猫を産んで最初のミルクには子猫を守る免疫が入っています)を飲むことによって免疫を得ます。しかし、この初乳による免疫があると十分な量の抗体が作られないため、初乳による免疫が切れかけた頃に1回目のワクチンを接種し、3週間程度開けて追加摂取します。

ワクチン接種プログラムの例

■子猫の場合
1回目:生後7~8週齢(生後2か月ごろ)
2回目:1回目接種から3〜4週間後(生後3か月ごろ)
3回目:2回目接種から3〜4週間後(生後4か月ごろ)
4回目:生後6~12か月
その後は1~3年ごとに接種

■子猫以外の場合
1回目:接種可能な時
2回目:1回目の接種から3~4週間後
3回目以降:1~3年ごとに接種

※ワクチン接種プログラムは獣医師さんの方針によって異なります。検討する際には必ずかかりつけの獣医師さんにご相談ください。

3.ワクチン接種を受ける際の注意点

ワクチン接種を受けるには猫ちゃんが健康であることが必須条件です。
ワクチン接種当日は、元気・食欲があるか、吐いたり下痢していないかなど猫ちゃんの様子を良く観察しましょう。

ワクチン接種後はごくまれにアレルギーによる副反応が出ることがあります。
可能性は低いですが、血圧が低下し意識を失ったり、呼吸困難となり命に危険が生じるアナフィラキシーショックを起こす可能性もあるため、アナフィラキシーショックが起こりやすい接種後30分程度は猫ちゃんから目を離さず、異常がある場合迅速に動物病院に連れて行きましょう。

副反応には顔が腫れたり(月のように丸く腫れるためムーンフェイスと呼ばれています)、皮膚が赤くなる、かゆがる、よだれが出る、嘔吐などの症状が出ることもあり、このような症状が出た場合も速やかに動物病院に相談しましょう。
また、このようなアレルギー反応は半日~24時間程度時間がたってから症状がでることもあるため、遅い時間に接種すると動物病院で対応できないことも。そのため、万が一に備えて、お近くの動物病院の診療時間や救急病院の場所等をあらかじめ調べておくと良いでしょう。

ワクチン接種直後に免疫ができるわけではなく、抗体ができるまでワクチン接種後2~3週間程度かかります。
ワクチン接種後2~3日はなるべく安静にし、激しい遊びなどの運動やシャンプーは避け、ストレスがかかることを避けましょう。

ワクチン接種を受ける際の注意点

大切な家族を守るためのワクチン接種

猫ちゃんの感染症は重症になると命を落としてしまうこともあります。
ワクチン接種を受けていれば苦しまずに済んだ子がたくさんいます。ワクチン接種により命が救えるのです。
私たち飼い主がワクチン接種の知識をしっかり身につけ、大切な家族を守ってあげましょう。

SBIプリズム少短の獣医師 藤沼淳也

監修者プロフィール

獣医師 藤沼 淳也

獣医学部卒業後、動物病院にて臨床業務に従事。
猫専門病院の院長を経て、現在はより良いペットの生活環境の構築に尽力。

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