病気を隠すセキセイインコ~SOSのサインを見逃さないで~
セキセイインコは病気で弱っていることを隠す生き物です。
野生下では、病気で弱っていると外敵に襲われたり、群れから外されることもあるため、生き残るために自分の病気を隠そうとします。
そのため、セキセイインコが隠しきれないほど弱ってから初めて飼い主が病気に気づく場合があり、気づいた時にはもう病気が進行しており手遅れになってしまうことも。
そうした悲劇を防ぐためにも、飼い主はセキセイインコの病気について知り、SOSのサインに気づけるようになっておくことが大切です。
本コラムでは、セキセイインコに多い鳥の病気と病気のサイン、病院にかかった際の費用目安、セキセイインコを病気から守るために飼い主ができることについてご紹介します。
セキセイインコの代表的な病気
1.そのう炎~口臭や頻繁なあくびに要注意!~
セキセイインコが頻繁にあくびをしていたり、口から嫌な臭いが出ている場合は「そのう炎」が疑われます。他に嘔吐や水を必要以上に飲むなどの症状もみられることがあります。
そのう炎とは?
そのう炎はセキセイインコを含む鳥類で特に多い病気です。食道と胃をつなぐ、食べたものを一時的に貯蔵する「そのう」で細菌などが異常に繁殖して炎症が起こる病気です。
そのう炎の原因
そのうの細菌や真菌(カビ)、原虫の感染により炎症が引き起こされることでそのう炎になります。
そのう内には健康な子でも細菌がいますが、例えば人間のご飯を食べるなどして、そのう内の細菌が異常に増殖してしまうとそのう炎が引き起こされます。
そのう炎の治療
原因となる菌に合わせて抗生剤や抗真菌剤などを投与し治療を行います。そのう炎は放置すると重篤化する可能性もあるため、早めに動物病院に相談し、治療することが大切です。
そのう炎の予防
セキセイインコを室内に放鳥する際には食べ物や食べカスなどを片付けるようにしましょう。
また、定期的な健康診断を受け、病気の早期発見、健康維持を心掛けることが大切です。身体検査、糞便検査などに加えて健康診断項目の1つとして「そのう液検査」を行っている動物病院もありますので獣医師に相談してみましょう。
2.メガバクテリア症(AGY症)~嘔吐や下痢、黒い便に注意!~
嘔吐や下痢、未消化の状態や色が黒いなど便の異常がみられる場合は「メガバクテリア症(AGY症)」の可能性があります。
メガバクテリア症とは?
マクロラブダスという真菌(カビ)の一種が鳥の胃の中で感染し、嘔吐や下痢などの胃炎症状を引き起こし、瘦せていく病気です。
メガバクテリア症は鳥の中でも特にセキセイインコに非常に多く見られます。健康なセキセイインコは症状がでないこともありますが、ストレスや他の病気などで免疫が落ちると発症しやすくなります。直前まで元気であっても急に発症し重症化、最悪の場合は死亡してしまう可能性もある恐ろしい病気です。
メガバクテリア症の原因
メガバクテリア症の病原菌は、マクロラブダスという真菌(カビ)の一種です。主に保菌している親鳥がひな鳥にご飯をあげる際に感染します。また、同居する鳥が感染している場合、便を介して感染することもあります。
メガバクテリア症の治療
メガバクテリア症であると診断された場合、抗真菌剤や免疫力を高める薬剤などを用いて治療を行います。早期に発見し治療できれば治る場合もありますが、発見が遅れ、胃の障害が大きいとなかなか完治が難しいです。そのため、定期的に健康診断を受け、早期発見に努めることが大切です。
メガバクテリア症の予防
初めてセキセイインコをお迎えした場合、動物病院で糞便検査をしてもらいメガバクテリア症の菌がいないかチェックしましょう。メガバクテリアに感染していても糞便中に菌が検出されないこともあります。定期的に糞便検査や体重チェックなど健康診断を受け、ケージやおもちゃは消毒し生活環境を衛生的に保ちましょう。
3.鼻炎(鼻かぜ)~くしゃみや鼻水が出る~
セキセイインコも人間と同様に「鼻炎(鼻かぜ)」にかかることがあります。何度もくしゃみを繰り返して鼻水が出るようであれば、鼻炎(鼻かぜ)が疑われます。
鼻炎とは?
くしゃみや鼻水などを引き起こす鼻腔粘膜の炎症です。
鼻炎の原因
鼻炎の原因は免疫力低下による細菌感染が多いです。他に真菌(カビ)、アレルギー、乾燥、ストレスなどがあります。
鼻炎の治療
原因によって異なりますが、感染症の場合、病原菌に合わせた抗生物質や抗真菌薬を投与します。
鼻炎の予防
普段から栄養のある食べ物をしっかり与え、温度管理に気を配ることが大切です。
水が鼻の中に入った場合など一時的にくしゃみや鼻水が出ることがありますが、くしゃみや鼻水は病気のサインかもしれません。くしゃみや鼻水が出続けていたり、他におかしな症状がみられる場合はすぐに動物病院へ連れて行きましょう。
4. 卵管蓄卵材症~腹部が張っている~
セキセイインコの腹部が張っていたり、膨らんでいるときに考えられる病気として「卵管蓄卵材症」があげられます。
卵管蓄卵材症とは?
卵管蓄卵材症は鳥の卵管に卵白、卵黄、卵殻膜などの卵の材料が蓄積された状態を指す病気で、セキセイインコに多くみられます。
卵材が大量に蓄積されると腹部膨大がみられ、呼吸器の圧迫による呼吸困難を呈すことがあります。
卵管蓄卵材症の原因
卵管蓄卵材症の原因は完全に解明されていませんが、持続発情が関連していると言われています。
卵管蓄卵材症の治療
卵管蓄卵材症の治療は発情抑制剤などの内科的な治療を行う場合もありますが、根治的な治療法ではありません。
根治的な治療法としては手術で卵管を摘出することです。
卵管蓄卵材症の予防
卵管蓄卵材症の予防は無駄な発情を抑えることです。
早期発見・早期治療が重要なため、腹部が膨らむ症状が見られた場合はすぐに動物病院を受診しましょう。
5. 疥癬症~顔やくちばし、脚がカサカサ白くなる~
強い痒みがみられ、顔周りの皮膚が白くカサカサになったり、くちばしや爪に穴の空いた白いかさぶたのようなものが見られる、爪やくちばしが異常に伸びてきた場合は「疥癬症」の可能性があります。
疥癬症とは?
疥癬症は、ヒゼンダニというダニによる感染症で、鳥の中でもセキセイインコによくみられます。
くちばし、顔、脚などに強い痒みがみられ、くちばし、顔、脚などがカサカサニなったり、白いかさぶたのようなものがみられます。
疥癬症は治療で完治が可能な病気ですが、治療が遅れた場合、くちばしや爪の組織が破壊され、変形や脱落を招くことがあります。変形してしまったくちばしは疥癬症を治療した後でも元に戻りません。
疥癬症の原因
鳥の皮膚に寄生するトリヒゼンダニというダニによって引き起こされます。
感染している親鳥や他の鳥から感染します。多頭飼育している場合は他の鳥にも感染する可能性があるため、同居している鳥にも注意が必要です。人に感染することはないといわれています。
疥癬症の治療
駆虫薬の投与によって行われます。
皮膚に違和感を感じたら速やかに獣医師に相談しましょう。
疥癬症の予防
定期的にケージの清掃や消毒を行い、生活環境を清潔に保ちましょう。
セキセイインコを迎え入れた際は感染がないか動物病院で検査を行いましょう。
治療にかかる費用はどのくらい?
治療にかかる費用は動物病院や病気の状態によって異なりますが、一般的には以下のような費用がかかることがあります。
■再診料:500円〜1,000円
■糞便検査・そのう検査:1,000円〜1,500円
■お薬代(7日分):1,000円〜2,000円
■注射代:2,000円
■入院費:1日あたり2,000円〜5,000円
■手術費:数万円〜数十万
実際の治療例
※過去の当社への保険金請求データをもとに、シミュレーションした事例です。
- 病名
- メガバクテリア症
- ペット品種
- セキセイインコ
- 事故年齢
- 1歳9か月
- 加入プラン
- プレミアム
治療費合計:36,018円
給付率:100% 自己負担率:0%
- 給付事例の詳細はこちら
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保険金種類 治療費用 保険金支払額 自己負担 自己負担の内容 入院1日目 10,206 ー ー 入院2日目 9,126 ー ー 入院3日目 9,126 ー ー 入院4日目 4,320 ー ー ∟入院合計額 32,778 32,778 0 診断書費用保険金 3,240 3,240 0 合計 36,018 36,018 0
メガバクテリア症のセキセイインコが治療のため4日間入院したところ、約3万円の治療費用となりました。当社ペット保険のプリズムペット プレミアムプランに加入していた場合は、全額保険金が支払われ、自己負担は0円です。
プリズムペット 鳥類、爬虫類プラン 保険金お支払い例
愛するセキセイインコがいつでも適切な治療を受けられるように貯金やペット保険などの準備をしておくことが大切です。予期せぬ病気やけがに備え、ペット保険に加入することも検討してみてください。
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愛する家族を守るために飼い主ができること
清潔な生活環境の維持
セキセイインコの健康を守るためには、ケージを掃除し生活環境を清潔に保つことが重要です。
便の掃除だけでなく、餌場・水場を清潔にし、新鮮なごはんとお水を用意し病気の元となる菌の繁殖を防ぎましょう。
飼い主ができる健康チェック
日常的に体重、便の状態、姿勢のチェックを行いましょう。
セキセイインコの様子が少しでもおかしいなと思ったら、動物病院に相談し、適切な治療を受けましょう。
飼育環境の保温
セキセイインコは体温が下がると免疫力が低下するため、弱っている際や寒い時期は保温が必要です。
ひな鳥や高齢のセキセイインコの場合25~30℃程度、健康なセキセイインコなら20~25℃程度、病気で弱っている場合30℃程度の環境に保温してあげましょう。
セキセイインコは寒かったり体調が悪いと体を温めるために羽を膨らませ膨羽します。逆に暑いときは体を細くし羽を広げる仕草をする場合があります。
セキセイインコの様子をみて、適切な飼育環境温度を保ち、異常がある場合には動物病院に相談しましょう。
適切な栄養バランスの食事
セキセイインコの健康を守るために、適切な栄養バランスの食事を提供することも大切です。
与えすぎも肥満や発情の原因になります。理想的な体重を維持できる適切な量にコントロールしてあげてください。
愛情を持ったコミュニケーションと運動
ストレスや運動不足もセキセイインコの健康に悪影響を与えます。
運動や遊びでストレスを軽減し、愛情を持ったコミュニケーションで絆を深め、健康で幸せなセキセイインコの生活のサポートを心がけましょう。
発情を抑える
セキセイインコは発情しやすい鳥ですが、過剰な発情や卵を産むことはセキセイインコの体に負担がかかるため、発情を防いであげましょう。
暖かく日の長い季節に発情しやすいため、夜はケージにカバーをかけ静かな所に置き、はやめに寝かせてあげるようにしましょう。同居している鳥やおもちゃや鏡など、飼い主との過度なコミュニケーションが発情の原因になることもあります。
動物病院では投薬によるホルモン治療を行うこともあります。獣医師に相談してみましょう。
もしもセキセイインコが病気になってしまったら
どんなに注意していても病気にかかることはあります。
治療期間が長期に及ぶ場合もありますが、飼い主がセキセイインコとともに治療を続けることが大切です。飼い主がセキセイインコを励まし、ともに闘病していけば、必ずその気持ちが伝わりセキセイインコも頑張ろうとしてくれます。飼い主が支えることでセキセイインコの回復につながります。
セキセイインコの健康管理には、異常を見逃さず病気の早期発見・早期治療につなげることが大切です。正しい知識を持ち、万一の場合に備えましょう。
監修者プロフィール
獣医師 藤沼 淳也
獣医学部卒業後、動物病院にて臨床業務に従事。
猫専門病院の院長を経て、現在はより良いペットの生活環境の構築に尽力。
※本記事はセキセイインコの飼い主さまの体験談を基に当社経営企画部にて編集構成しております。