日本犬の代名詞とも言える柴犬は、その気高い精神とちょっと臆病な性格のギャップが魅力です。前に飼っていたゴールデンレトリバーが虹の橋を渡り、2年間の空白期間を経て悩みに悩んで選んだ柴犬という選択。
保護団体からの紹介で家族に迎え入れてからは、母も父も、もちろん自分もあっという間に虜になってしまいました。
らい(オス2歳)という名前はライ麦からとりました。友人たちが飼うわんこの名前がムギだったりマメだったりしたので穀物系の名前で統一して仲良くなってほしかったからです。
そんな願いも虚しく立派な犬見知りになってしまいました。
一緒に暮らした2年間で筆者が知った「実録!本には載ってない柴犬の生態」をお届けします。
柴犬の概要
私たちの生活に最も身近な日本犬といえば、やはり柴犬です。はるか昔から日本の地で、かけがえのないパートナーとして共に生きてきました。純粋な瞳や凛々しい表情は、どこか素朴な魅力に溢れています。柴犬の毛色には赤毛、黒毛、胡麻毛、白毛の4種類があります。
スタンダードの規定では、おなかや足の内側と先、しっぽの裏側の毛色が白いこと(裏白)が定められています。
赤毛は、生まれてくる柴犬の約80%を占める代表的なカラーです。ひとくちに赤毛といっても、色の濃さや明るさはそれぞれ異なります。
柴犬という名前の由来は諸説あります。「小さなもの」の意味という説、「柴の木の色に似ている」という説、「柴の中で軽やかに獲物を追いかけた」などの説です。
うちの柴犬は保護施設出身
元々、実家ではゴールデンレトリバーの「グリス(男の子)」を飼っていました。
そのグリスが13歳で亡くなり、その後2年間は次の子を迎えることはしませんでした。グリスも晩年は介護がかなり大変だったこともあって母も次の子を迎えることに難色を示していましたが一番面倒を見ていた母のペットロスが特にひどく、心配した家族で説得を試みました。
ようやく「大型犬はどうしても厳しい…でも日本犬なら何とか…。」という言葉をなんとか引き出す事に成功。
歴代のわんこ達はご近所から貰ってきた子ばかりだったのですが今回は里親マッチングサイトを使いました。
応募しては審査落ちを繰り返しましたが保護団体で保護されていた「らい」と出会いました。
らいは3兄弟の長男で生まれた時から皮膚病がひどくブリーダーさんから捨てられてしまった子を保護団体が引き取り皮膚病を治して里親を募集していた子でした。
うちにきたときは生後4か月~5か月くらい。最初は再び犬を飼うことに乗り気ではなかった母も、まだ幼くて「どこかに連れていかれる」という恐怖から震えていたらいを抱っこした瞬間にその母性が大爆発し、一言「うちで育てる!!」と言い放ちました。
小さい頃のしつけ、性格
しつけはあまりしてません。まずは新しい家に慣れてもらって、たくさん可愛がってもらって家族を好きになってもらうことが先決だと思いました。
人間だって嫌いな人や親しくない人の言うことは聞きたくないでしょ?
意識的にしたことは身体中を触られることが普通だと認識してもらうことです。可愛がっているうちに自然とやっていました。
触られることへの警戒心は人に咬みついたりすることに繋がってしまうので身体中撫でまわしてましたね。犬好きの飼い主さんならやってますよね。
あとは生活する上で最低限のことしか教えてません。待て、お座り、テーブルに乗らない。その程度です。
お手もおかわりもできません。犬は人間の奴隷ではないので自由が一番いいというのが我が家のポリシーです。
特有の柴距離
前に飼っていたゴールデンレトリバーのグリスが人間大好きのべたべた犬だった為、柴犬の距離感に戸惑いました。
おいでと言えば来ますが、自分の1メートル手前で止まる。撫でようとすると機嫌によっては逃げられる。寝ているところを起こすと噛むふりをして警告してくる。気高くて警戒心が強い子です。
でも、これって人間に当てはめると普通に嫌がることかもしれません。今までは犬の優しさに甘えていただけだったんだなと、今度からはお互いを尊重しながら付き合うようにしなきゃと心の持ち方を変えました。
ちゃんと尊重して接していれば人懐っこくていい子です。起きているときはどこを触っても怒りませんし、ゆったり休んでいるときに撫でれば気持ちいい顔をします。
お風呂だけは苦手で今でも怒ったりしますけど。
警戒心強めのビビり(うちだけ?)
とにかく新しいものに警戒心を持ちます。そしてなかなか慣れません。扇風機にびびり、暖房器具にびびり、置物にびびり、サッカーボールにびびり…。挙げ出すときりがありません。
ハウストレーニングでは大好物のおやつを中に置いても頑なに片足も入れようとしませんでした。
らいは悪いブリーダーに放置されていたためにワクチンの接種が遅れ、そのせいで外界に触れるのも遅くなってしまいました。
専門家の方によれば、このことも理由のひとつと考えられるそうです。また、親犬や人間の庇護が薄かったのも関係しているかもとのこと。
まぁ、これも性格だと思って慣らしながらも楽観的に見てます。もともと柴犬は狩猟犬だったので警戒心の強い犬種ですしね。
散歩大好き
犬ならばほとんどの犬が散歩好きなはず。らいは散歩好きでさらに全力ダッシュが好きです。筆者は学生時代バスケットボール部だったので足の速さには今でもやや自信があるのですが、ぜんぜん敵いません。
耳を倒して流線形になって走っている姿は壮観ですね。たまに、追っかけっこしようぜとけしかけられる時もあります。へとへとになりますが楽しいです。
そして柴犬にとっての散歩には別の意味もあります。柴犬はあまり家で排泄をしません。
これは住処に臭いがついて外敵にバレてしまうのを防ぐためと言われてます。
なので雨の日も風の日も雪の日も散歩にいきます。あまりにひどい天気の日はらいも嫌がるのでトイレだけで帰りますけどね。
ダブルコートで抜け毛がすごい
胡麻柄のらいですが、他の柴犬と同じで抜け毛がすごいです。換毛期(春と秋)には剥げるんじゃないかと心配になるくらい抜けます。出迎えてくれるのは嬉しいのですがスーツ姿の時に寄ってこられた日には毛がベターっとつきます。車に乗せるとあとで掃除機をかけるのが大変。
でも、これが日本犬のいいところで、日本の気温に順応してるんですよね。わかってる。わかってるからブラッシングは嫌がらず受けてほしいのです。
帰巣本能が強い!?
おうち大好き、その縄張り意識の強さから1度野良猫を追っかけて脱走したことがありました。
母しか家におらずすぐに追いかけたのですが、そこに見えたのは車を後ろに従えて道路のど真ん中を走るらいの姿…。母は卒倒しそうになったそうです。
猛スピードで走り去って行くらいを追いかけ探す母。必死に2時間探して疲れ切って家に戻るとらいが「はやく家のドアを開けてよ」とでも言いそうな顔をしてちょこんと座っていたそうです。
柴犬を飼われている方に聞くとやはり脱走とその後の帰宅はけっこうあるようです。
とはいえ、逃げ出さないように細心の注意を払わないといけないですね。
日々、らいを見ていて思うのは犬と猫の中間くらいの気質だなぁということ。
一人遊び大好きでよく階段からボールを落としては拾いに行ってを繰り返してます。家族が起きだしてもマイペースにまだ布団でグーグー寝てることもありますが、寝るときは家族と一緒に寝付きます。
家族団らんの際も少し遠目で見守る感じで「仲間に入れてよ!!」といったところもありません。
飼っているというよりは居心地のいい距離に常にいる生活の相棒という感じでしょうか。
柴犬は決して飼いやすいわんことは言えないかもしれません。でも飼い主がしっかりとした態度と彼(彼女)を尊重する姿勢を見せればいい家族となって傍にいてくれます。
家族と家をずっと守ってくれる頼れるパートナーですよ。
監修者プロフィール
獣医師 藤沼 淳也
獣医学部卒業後、動物病院にて臨床業務に従事。
猫専門病院の院長を経て、現在はより良いペットの生活環境の構築に尽力。
※本記事は柴犬の飼い主さまの体験談を基に当社経営企画部にて編集構成しております。